灯りの点かない部屋。
窓からの赤い光だけが空間を表していた。
その空間に存在するのは一人の女と一人の男。
 
私とカイト。
 
窓に近い私とは違い、部屋の奥に居るカイトの顔は伺えない。ただ見えるのは手に持つアイスピックのみ。
見えないはずのカイトの瞳から目を逸らさずにミリ単位であとずさる。
背中に当たる陽が熱いはずなのに、空気が冷たく寒気がした。
 
私が距離をとっても、相手は一向に動かない。見えない瞳を見つめたまま冷や汗が頬をつたうのが分かった。
吐息さえも響く部屋の中でただ互いに向き合う。

 
「…マスター」

 
私はビクリと体を強ばらせる。暗闇から微かに見える口元が開いた。

 
「…なんで逃げるんですか?」

 
通常の彼よりも低い声が空気を震わせる。
私は強ばった体をさらに固くし、固まった口を開き返す言葉を探りあさったが、何故か頭が着いて行けない。

 
「マスター…外に出ちゃ駄目って言ったじゃないですか」

 
どくり。
彼は淡々と続ける。

 
「俺の言うことちゃんと聞いてくださらないと…」

 
さらに大きくどくりと揺れる。

 
「マスターは俺の物なんですから」

 
その言葉を聞いた瞬間、最大の衝撃と何かが胸の奥から込み上げてきた。

 
「私は!カイトの物なんかじゃない!!私はっ…!」

 
その瞬間、熱い物が手の仰をかすみ。それは直ぐに痛みへと変わった。

 
「!痛っ…!?」

 
反射的に手を庇った瞬間、前から覆われ壁へと倒され、壁との衝撃でくぐもった声がもれた。

 
「ぅ゛…!」
 
その隙に庇ったはずの手を奪われ、はっと我に帰り目に映ったカイトの少し濃い蒼の瞳は、三日月のように微笑んでいた。その表情に恐怖感が込み上げてきて、手を引こうとするがまるでびくともしなくて、もっと怖くなりさらに強く手を引こうとした。
 
すると捕まれていた手の傷口にカイトの指が触れ、また衝撃が走った。

 
「っ…!?」

 
顔の歪む私を見て、待っていたかの用に指の力をさらに強め傷口をえぐり、その激しい衝撃に耐えられず私は声を上げる。

 
「痛っ…!い゛……ぁあ゛っ!!」

 
肩にばかり力が入って、うつむき痛みを耐える用に硬く閉ざした瞳からじわりと涙がこぼれた。

 
「…ほらマスター、痛いですよね?」

 
あくまでも力は弱めず、優しくカイトは聞く。私はあまりの痛さに素直に答えることしかできなかった。

 
「ぃ…いた、ぃっ…!」

 
「手、離してほしいですか?」

 
ギリッと握られ、もう声さえ上げられない。
ただ、早くこの痛みが無くなることしか考えられなくて、汗がとめどなく出て息も荒いまま小さく頷く。

 
「それには条件があります」

 
頷く。


「これから一切、外へ出ないでください」

 
頷く。


 
「俺と…、ずっと此処にいてくたさい」

 
ただ頷く

 
嫌だなんて言えない。言ったら、きっともっと痛くなる…。
早く、早く、この痛みから解放してほしくて。でもそうしたら私は貴方から一生解放されないのだろうか。
 
すると、握られていた手は緩められ、包むように優しく抱き締められる。
私はうつむいたまま、解放された手を胸元で庇う。まだ痛みは、残る。
 
耳に唇が触れるほど近くでカイトは囁いた。
優しく…、ただ優しく。

 
「だから初めから、俺の言うことを聞いていれば良かったんです」

 
…カイトの存在に。

 
「そうすれば、痛い思いもしません」

 
…見えぬ未来に。

 
「どうせ貴方は−」
 
 
 
ただ震えるだけ。
 
 
 
 
 
ら。
 

気付けば陽の光すら感じなくなっていた。
















-----アトガキ----
ものすごく暗いものになりましたね、ヤンデレカイトと女の子マスターさんです。
最初の文でこんな可哀想なことして女の子マスターさんごめんなさい;;
管理人は基本文を書く人ではないので色々可笑しな所が沢山あるとは思いますが、どうか広い心で読んでくださいorz
と、いうか文書くの苦手です。←

ここまで読んでくださりありがとうございました。